
2008.04.29.
数年前に鞄を作って頂いた。斜め掛けに出来て、肩に紐が食い込まないくらい幅広で、20キロの荷物が入る鞄、とお願いして出来上がってきた鞄は、堅い木綿に柔らかい皮が底に当ててあるものだった。どこに行くにも持ち歩いていると、肩に幅広の持ち手が掛かるともう一枚洋服を羽織ったような感覚があることにも気がつき、堅かった木綿がいつの間にか柔らかくなっていた。いつもなら底がすり切れて来るところも、この鞄はそんなこともなく、ただ最近になって紐が少し私の背丈には長いようで重さがより重く伝わってきているのと、三つあるポケットの内、ひとつに大きな穴があいたので(ズボンのポケットに手を入れるように、無意識にこのポケットに手を入れていることにも最近気がついた)修理をお願いすることにした。
作ってくださった方に連絡して状況を伝えながら、修理に出すと手元に一時なくなるのだなと思ったら、修理に出すこと自体迷いそうになっていることに、ちょっとびっくりした。空っぽにするために、鞄の中からいろいろなものを取り出す。いろいろなものが出て来て、飴の袋やクリップや取れたボタンやらバラバラと出て来たところで、修理から戻って来たら、中身をもっと整理して使おうと思った。

2008.04.28.
うつわ菜の花での展示が昨日、終了致しました。
* * *
中庭に一週間置いておくとどうなるだろうと思ったのと、
『花』の字は外にあった方がいいと思って、砂利の敷かれた地面の木の根元に落としておいた。
一週間後の昨日、会場に行って見ると、
途中、雨が降って、紙が地面の砂利に張り付いて、溶けて、墨で書かれている花の字の部分だけが残っていた。
http://odawarananohana.weblogs.jp/もう持ち上げることも出来ず、溶けた紙の隙間からは小さい草の芽が出て来ていた。
最終日の昨日は、屏風の残ったひとつの面に字を書いた。
『朝』と書いて、次の日は日に晒されたしゃれこうべのかたちを表している『白』の字を書いた。
『白』の字の裏面に、『鬼』と書いた。
鬼門と調べると、忌み嫌われる場所、鬼が居る場所と字典にあった。鬼と調べると、人がなったものだとあった。神は自然の中から出たもの、鬼は人から出たものとあった。自分が今までやってきたことを考えていたら、鬼門という場所に親しみを感じた。そして鬼には会ったことがないけれど、字を書く時にふっと沸いて来る普段は感じない気持ちが鬼を思い出させた。最後の日には『鬼門』と書こうと決めた。
数年前に先生に会いに行った時に彼女が大きな筆を一本くれた。大きすぎるような気がして、ずっと使わずに置いていたものを、鬼門と書こうと決めたら使ってみたくなった。屏風の白い大きな画面にまず鬼の字を書いた。
鬼の字を書いたら、屏風のかたちが目に入って来て、二枚の扉がそこにあるように思った。扉の前に鬼が居て、これでもう鬼の門がここにあるなと思って、もう門の字は書かずにやめた。
立てたまま書いたせいで、『鬼』の字からは細く墨が垂れた。それが床までたどり着かずに何本も垂れていた。
離れて見ていたNが鬼が泣いていると言った。
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夏には東京で作品をご覧頂ける機会ができました。
近くまたこちらでご案内をしたいと思っております。

2008.04.23.
現在、小田原のうつわ菜の花で開催中の展示『一日の跡』の最終日に、2m四方の屏風に字を書くことを予定しております。当初ワークショップ参加の方にのみ公開だったものを、最終日のこの会はよりたくさんの方にご覧頂けるよう公開して行なうことに致しました。
4月27日(日)14:00より字を書き始めますので、観覧希望の方は14:00までに菜の花・あん工房2階へお集まりください。
※パフォーマンスのみ観覧される方は無料となります。
※パフォーマンス会場は、展示会場とは異なりますので、ご注意ください。
※ワークショップのお申し込みも引き続き受付しております。
【お問い合わせ】うつわ菜の花 電話0465-24-7020(11:00-18:00)担当:小榑(こぐれ)
写真撮影:杉本光俊

2008.04.21.
19日土曜日から展示がはじまりました。
入り口から中庭に掛けては、新作の木を見るという字源を持つ『相』の字が糸に吊るされ、風に揺れています。
通りに面した手前の空間には雑誌アイデアに掲載中の作品と篆刻作品がご覧頂けます。
中庭には写真下の『花』があります。これは会期中、外に置いたままになりますので、雨が降れば雨に濡れ、風が吹けば葉が落ち、刻々と景色が変化しています。
奥の部屋には、会田綱雄さんの詩『十月』を書いた屏風を中心に、雑誌アイデアに掲載中の作品も引き続きご覧頂けます。
小田原までは新宿から小田急線で1時間半程度、品川からJR東海道線で1時間15分程度です。
うつわ菜の花までの道のりには、和菓子菜の花駅前店やあん工房があり、焼きたてのどら焼きなど召し上がりつつ、小田原城のお堀端を歩かれるのも楽しそうです。
春のお出かけも兼ね、ぜひお立ち寄りください。


2008.04.17.
展示の搬入が明日に迫る。
Nは相変わらず毎日絵を描き続けており、机の手前はNの陣地で、向うが私の陣地になっている。
ふたりで作業をしながら、九年前からNは多分こんな時間を過ごしたかったのだと思った。私はこんな時間をふたりで過ごしたいと口では言いながら、そうは思っていなかった。最近やっと、腹の底からこんな時間がやって来て嬉しいと思える。
昨日の夜、マトンのトマト煮込みとクスクスを食べた。少しずつ残ったので、今日の昼、野菜を足して、マトンの残った一切れを半分ずつして、またクスクスと一緒に食べた。人参を切ろうとしたら、小さい芽が出ていた。その芽が近くで見ると今にもこれから大きくなると言わんばかりの細かいギザギザがいっぱいについた小さな葉っぱがすごい密度で束になっている。Nにこれも描いたらどうかと切って渡す。

2008.04.15.
・ラム骨付き肉のグリル(塩こしょう、クミン)
・温野菜(ジャガイモ、人参)
・サラダ(エンダイブ、エストラゴンマスタード)
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展示が近づいて来て、気がそぞろになっている。
夕方、私は石を、Nはパネルを買いに蒲田へ行く。
案内を送っていたら夜が来て、お腹が減って、冷蔵庫で解凍してあったラム肉を焼く。ローズマリーが見当たらず、クミンと岩塩と黒こしょうをたっぷり付けて焼く。
Nは骨付き肉をきれいに食べる。ジビエと、と書いてある赤ワインを買っていたので、それを出して来る。飲みながら、Nがおいしそうに骨の周りの肉を食べるのを眺めていたら、なんだか幸せな気分になる。Nはそうやって食べながら、動物は骨と肉で出来ているのだとわかる、と言う。
今朝は、夢を見たせいで、あまりよく眠れなかった。今はもうない場所に、今はもうそうしては会えない人たちが、ひとりまたひとりとやって来て、みんなでご飯を食べていた。目が覚めてもまだ嬉しいほど、夢の中でみんなが笑っている。

2008.04.12.
・白花豆とソーセージのトマト煮込み
・サラダ(モッツァレラチーズ、トマト、エンダイブ)
・パンいろいろ
* * *
ワークショップの会場へ行くと、とある、まだ見ぬ方からパンが届いていた。ありがたく頂く。
帰りにスーパーマーケットへ寄ると、イタリアフェアをやっていて、豆の缶詰が売っている。
頂いたパンに合いそうだと買って帰る。
ワインも出してきて、パンをかじるとおいしい粉の味がする。直火であぶって食べると、もっと香りがよくなった。食べていたら、フランスの市場で買っていたパンの味を思い出した。大きなドーナツ形のずしりと重たいパンを持って帰るとき、なにかあったらこのパンが武器になると思っていた。

2008.04.09.
4月になってからNが絵を描いているので、私はその隣で見ている。私が字を書いている時は、Nが見ていることを知って書いているのだなあと、自分が見る人になってみるとわかる。他人の目が欲しいのだ。ただし私達には今のところひとつの部屋とふたりの人しかないので、ふたりともいっぺんに描く/書く人にはなれないし、ふたりともいっぺんに見る人にもなれない。どちらかが描き/書き、どちらかが見る。
作業台として今年、新しく買った机は本来の作業台となって、使わないまま取ってあったちゃぶ台がまた食卓になった。描いたり/書いたり、見たりの合間に食べるので、ご飯の写真も撮っていない。テフロン加工のフライパンを買ったら、いろんな食べ物がくっつかずに簡単に焼いたり、炒めたりできるようになった。そのフライパンと大きな鍋がコンロに出したままになっていて、そのふたつの調理器具で出来る食べ物を作っている。おとといはお好み焼きを食べた。昨日はスパゲッティを食べた。