
2008.02.27.
夜、今月いっぱいで閉店になるトラウマリスへ行く。お店の中は気のせいか、気持ちが高ぶるような気配が満ちていた。カウンターの上で字を書いたのはもう一年半も前になっていて時間が過ぎる速さにびっくりする。またね、またね、と何度も言って帰って来る。
帰りは雨が降っていた。家の近くの坂道で立ち止まって、木と空をちょっとの間眺めていた。雨はもう冷たくない。

2008.02.27.
・ブリの照り焼き
・だし巻き卵
・切干し大根とひじきのナムル
・豆ご飯、白菜漬物
今年最初の豆ご飯を炊く。N、おかずのどれでもなく豆ご飯がおいしいと言って食べる。

2008.02.27.
東京に帰って来たら、梅が満開になっていて、通り過ぎるとふっといい匂いがした。梅の木の下にある大きな壺の中の金魚が泳ぎ回っている。冬の間は一度も姿を見なかった。生きていたのだなあと思って、通るたびにじっと覗き込む。

2008.02.25.
東京と関西を毎月行き来しているのに、富士山を見た記憶があまりない。雪の混ざる冬空が晴れた青空に変わったので窓の外を見たら、正面に富士山が見えた。新幹線から見る富士山がある景色はすっとした峰の線が空高くまで伸びている山の形の前に数え切れない程の工場がある。目を引く三本の煙突からは富士山にかかる雲よりも白い煙がもくもくと出ている。

2008.02.22.
新幹線の各駅停車で関西へ向かう。今朝、目が覚めたときに日差しがまた一段と暖かくなった気がした。小田原で電車が停まっている間、冬が終わったように明るい。
色川武大『狂人日記』を読む。この間まで、妻だった孝子さんの回想録を読んでいた。彼らの日常を垣間見たせいか、彼自身の作品になかなか手が伸びないでいた。出掛ける前に、思い立って鞄に入れて、電車の中でページを開いて、気が付いたら読みふけっていた。静かで平らな景色がずっと向こうまで広がっていて、その中をゆっくり歩いているような心地よさがあった。すっと窓越しに冷たい空気が伝わって来て、本から顔を上げると薄く一面に雪の積もった田んぼが広がっていた。

2008.02.21.
午後の間、Nと近くの森を歩く。数日おきに走っているけれど、歩くのは久しぶりだった。歩いてみるとずいぶん広い。いつも出くわす猫たちは草の間で伸びて眠っていた。走っている時、転びそうになるので足許を気にする曲がり角の横には柿の木があることに気づく。行き止まりと思っていたところの先にも道が続いていて、小さなお地蔵さまが祀られていた。暗いと思っていた脇道に、枯れ葉が積もって日だまりになっている気持ちのいい場所を見つけた。おじいさんが一人で少し歩いては戻り、大きな木を支えに体操をしている。歩くよりほんの少し速く走っているだけで、たくさん見えないものがあるのだと思った。
* * *
・牛肉とれんこんのオイスターソース炒め
・マグロとアボガドの韓国風和え物
・春菊とりんごのくるみ和え
・麦ご飯、赤出し(豆腐、胡麻豆腐)

2008.02.20.
・鶏肉と赤ピーマンのトマト煮込み、菜の花塩茹で
・ブロッコリーのポタージュ、カレー風味
・手打ちパスタ
朝、リンゴとくるみとパン粉でパイを作って食べる。パイの上に塗った卵が余っていたので、夜、それを粉に混ぜてパスタにする。適当にこねて、なんとなくいいような気がしてストーブの傍のあたたかいところにしばらく寝かせておいたら、生地がよく伸びて、今まで作った中では一番うまく出来た気がする。

2008.02.17.
昨日ワークショップが終ってから、おいしいパン屋を見つけたと連れて行ってもらった店のパンをNの分をお皿に載せておいて先に一人で食べる。けしの実とクルミが入っている。スコーンもおいしいと勧められてNと自分の分を買ったのを袋のままテーブルに置いて、武田百合子さんの『日々雑記』を読みはじめる。武田さんは温泉場でいろんなものを食べている。温泉場の話が終るところで、ひとつめのパンを食べてしまって、袋のスコーンを見ていたら、この間、朝にスコーンを焼いた時、朝ご飯を作りすぎてしまい、Nがこんなに食べたくないと言ったことを思い出した。それで今このスコーンをひとつ食べてしまって、ひとつは仕舞って、明日の朝、残りのひとつ食べれば、Nはスコーンのことを知らないはずだと思い、ひとつを食べる。武田さんは温泉場で過ごす間ずっと親しげに見つめていたアヒルを宿の人から鴨だと知らされて、明日になれば食われてしまう、と言われたところで温泉の話を締めくくっていた。
* * *
腕に小さいかさぶたがある。
この間、実家で猫に咬み付かれたのだった。母が家を留守にして、めずらしく数日実家に泊まっていた。ルーはどうして母がいないのかわからず寂しくて、その寂しいことをどうしていいのかわからなくなっているようだった。久しぶりに見る私の顔を、あなた誰ですか?というまなざしで見て、僕は寂しいんですという顔で気に入りの毛布を前足で何度も何度も踏みしめていた。家に泊まって三日目に、時間が空いて何をするでもなく椅子に座っていると、ルーが足もとにやってきたので抱き上げると、じっと抱かれていた。久しく計ったことがないけれどきっと八キロはある黒猫を抱きしめていると、猫を抱いているのか、猫に抱かれているのかわからなくなってくる。ルーは指と爪を肩にぎゅっと押し付けて放されまいとしながら、ほっとした顔をして目を閉じていた。肩に押し付けられた小さい足の感触に、私はこんなに寂しい気持ちになったことがあるだろうかと思った。嬉しくても寂しくても悲しくても、どこか冷たく見放している気持ちがこみ上げて来て、その度に戸惑う。ルーは小さい鼻息を立てながら眠っていた。
しばらくたって腕がしびれた頃、一度床に降ろそうと動くと、ルーはぱっと目を見開いて、どうするんですか?という目をして腕をぎゅうと咬んだ後、あなた誰だったんですか?という冷たい顔になって歩いて行ってしまった。
帰る時、日向で寝ているルーに帰るねと声を掛けると、ニャと啼いて尻尾をゆらんと動かした。

2008.02.17.
昨日、ワークショップが終って、駅から家まで歩いて帰る。坂道を上りきったところで上を向いて歩いていたら、街灯がジーと音を立てながらピンク色になって点滅していた。ピンク色の灯りの下まで来ると、その横に青白い半月が見えた。

2008.02.16.
・煮魚(鰆、ごぼう、豆腐)
・ゴマ豆腐
・菜の花辛子和え
・雑穀米、納豆、白菜漬物

2008.02.15.
・カキフライ(タルタルソース)
・サラダ(パセリとタマネギのドレッシング)
・赤出し(わかめ、わけぎ)
・雑穀米、白菜漬物
仕事先の方から牡蠣を送って頂く。いろいろ味をつけないで食べるのが一番と聞いて、カキフライにする。
いつもは下味をつけるところを何もせずに揚げてみる。タルタルソースも作ったけれど、ふとなにもつけないでそのまま食べてみると、下味もなにもしていないのに塩味(海水)の味が残っている。揚がったパン粉の中に蒸し牡蠣が入っていた。それだけでおいしいのにびっくりする。

2008.02.15.
ベランダの
窓から見える木のそばまで実際に行くと、太くはないけれど背の高い木がたくさんある。木を見上げていると葉のない枝がきれいだなと思う。今まであまり見ていなかったとも思う。その形がきれいだと気づいたのは去年の夏、新潟の砂丘館の庭で人を待っていた時に、見廻していた景色の中にあった松の枝だった。木はこんなに黒々と見えるのだなと思ったのだった。

2008.02.14.
・ほうれん草とカッテージチーズのカレー
・ピクルス
・全粒粉パン
東京に暮らすようになって、京都にいた頃、よく行っていたインドカレーのお店に簡単に行けなくなった。その味に近いお店を東京でも探したけれど見つからず、偶然古本屋で買ったインドカレーの本のレシピで作ると、そのお店の味に近い味になった。
何度作っても、ちゃんと美味しくなるのだけれど、なにがこつなのか未だにわからない。

2008.02.14.
図書館に行く。帰り道はプールの横を通る。夜の、特に冬のプールはしんとしている。去年の夏から水はずっと入ったままで、今はその水は深緑色になり大きな池のようになっている。冬でも、夜になるとプールサイドの電燈は必ず点いていて、蛍光灯が作っている人工的な光の溜まりに夏の夕暮れの景色がだぶって見える。

2008.02.12.
ミネストローネと鰯の南蛮漬、サラダ、パン
サラダは先日箱庭さんで出して頂いたサラダに金柑が添えられていたのが美味しくて、それから何度か作っている。ミネストローネは野菜を鍋で一種類ずつ炒めては、加えて、全部しっかり炒めたところから水を加えるのでとてもコクが出る。いつもチーズをかけて食べる。色は決して美味しそうな色にはならないけれど、この作り方が最近は気に入っている。
今日は西麻布のMITATEに夏の展示の下見に行く。雨の音が意外なほど大きな音で響いている。何ができるだろうと考えながら、壁のひとつひとつが空白になった時を想像しながら歩く。歩いていると空間が感じられてくる。なにか密度が高い場所と、淡い場所がある。はじめて展示をする場所へ行って、歩き回る中で、この場所の『ひっかかり』に出合うのがいつも楽しい。

2008.02.08.
いつもはシャッターが降りている倉庫が、今日はシャッターが開いている。外から見るより天井が高くて広い。何といって変わったところがあるわけでもないのに、しばらく立ち止まって見ていた。