華雪BOOK
エントリータイトル外の風
エントリー投稿日時 2009.02.03.
エントリーのカテゴリーmemorandum
夕方近くまで来たという友達がふらりと訪ねてくれる。彼女を駅まで送りがてら、穴開けパンチを買いに行く。小さい穴開けパンチが昼間からどうしても見当たらないのだった。駅までの道すがら、足下を猫が行ったり来たりしている。5分ほどの間に5匹通り過ぎて行った。駅で友達と別れて、豆腐屋でがんもどきと豆腐と油揚げを買う。店先でおじさんに今日は油揚げあるよ、と声をかけられる。ぼんやりしていたので、びっくりしていると、ね、今日はいっぱいあるよ、とにっこりされる。そうだ数日前、油揚げが売り切れだと言われたのだった。豆腐を買おうと思っていたけれど、そうかそうかと言われるがままに油揚げを買う。目的の豆腐も買って、がんもどきも買う。八百屋をのぞいて、途中の果物屋でバナナを買う。その後、花屋をのぞいてから、穴開けパンチを買いに100円均一へ行く。穴開けパンチが100円で売られているとはどういうことなんだろうと思いながら、箱に入った穴開けパンチを買う。箱を開けたら濃いピンク色のものが出て来た。そのまま帰ろうと思ったのに、花屋に戻りたくなる。戻ってほんの小さい束で売られていたアネモネを買う。店に入ると花のむんとした匂いがした。それが花の匂いとも思えない、なにか生きものの匂いのようで思い切り吸い込む。吸い込んだら、店中の花の色が目に一度に映る。八百屋とも魚屋とも果物屋ともどことも違うこの色は生き物なのだなと思った。

バケツから出したままのアネモネをさっと渡されて、水の滴る小さな花束を指先でつまんでしばらく歩く。豆腐の袋は油揚げがはみ出していて、八百屋の袋はアスパラガスがはみ出していて、袋一杯でもはみ出してはいないバナナの袋にアネモネを挿して帰る。

水揚げをして、ガラスの器に生けると、外では閉じていた花びらが一斉に開いた。それを眺めながら、床の上でNと寝転がっていた。Nは眠ってしまったので、本を読んだり、時々うとうとしたりしていると、顔に冷たい風が触れた。床の上から戸の下側の隙間を見ると、向こう側が見える。そこから外の風が細く吹いて来ているのだった。反対から吹き続けているファンヒーターの暖かい風の中の冷たさが心地よくて、しばらくそのすきま風を顔に当てていたら、Nと最初に暮らした古いアパートのことを思い出した。お風呂もトイレもない一つきりの板間の部屋があるだけのそこは、建物の入り口に共同の玄関があり、靴箱やら傘立てやらがアパート全員分のものが置かれていた。部屋は、廊下に並んだ戸を開けるだけで、いきなり各々の部屋がはじまる。我が家のその1枚だけのたよりない薄い木の戸にも、下側に隙間があった。その部屋にいた頃は毎日思いついたところで寝ていて、床の上に直接寝転んだまま眠ってしまうことがよくあった。床の上で、夜中目が覚めると、なぜか年中窓が開いたままの廊下から外の風が入り込んで来る。窓の外には石榴の木があって、毎夏、たくさん赤い実が実った。外の風の入り込む戸の隙間を寝ぼけ眼で見つめながら、ここではないところに行きたいと毎日思っていた。その頃想像などしなかったところに、今はやって来たけれど、固くて冷たい床の上にいて、戸の隙間を通って吹き込んで来る外の風の心地よい冷たさは変わらない。そのことが、ここ数日の抜け出しにくい曇った気分を拭って行った。
開講予定
東京と京都と大阪の三会場でワークショップを定期的に開講しています。
以下からお申し込み頂けます。
篆刻講座「名前の判子」

1月19日(土)12:30〜15:30

篆刻講座「冬の言葉を彫る」

1月19日(土)15:30〜18:30

篆刻講座「名前の判子」

2月16日(土)12:30〜15:30

篆刻の講座

1月26日(土)10:00〜12:30

篆刻の講座

1月26日(土)13:00〜15:30

篆刻の講座

1月26日(土)16:00〜18:30

書の講座(親子で参加可)

1月27日(日)11:00〜13:00

篆刻の講座

1月27日(日)15:00〜17:00

篆刻の講座

2月22日(金)19:00〜21:00

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