
日曜日

2008.02.17.

memorandum
昨日ワークショップが終ってから、おいしいパン屋を見つけたと連れて行ってもらった店のパンをNの分をお皿に載せておいて先に一人で食べる。けしの実とクルミが入っている。スコーンもおいしいと勧められてNと自分の分を買ったのを袋のままテーブルに置いて、武田百合子さんの『日々雑記』を読みはじめる。武田さんは温泉場でいろんなものを食べている。温泉場の話が終るところで、ひとつめのパンを食べてしまって、袋のスコーンを見ていたら、この間、朝にスコーンを焼いた時、朝ご飯を作りすぎてしまい、Nがこんなに食べたくないと言ったことを思い出した。それで今このスコーンをひとつ食べてしまって、ひとつは仕舞って、明日の朝、残りのひとつ食べれば、Nはスコーンのことを知らないはずだと思い、ひとつを食べる。武田さんは温泉場で過ごす間ずっと親しげに見つめていたアヒルを宿の人から鴨だと知らされて、明日になれば食われてしまう、と言われたところで温泉の話を締めくくっていた。
* * *
腕に小さいかさぶたがある。
この間、実家で猫に咬み付かれたのだった。母が家を留守にして、めずらしく数日実家に泊まっていた。ルーはどうして母がいないのかわからず寂しくて、その寂しいことをどうしていいのかわからなくなっているようだった。久しぶりに見る私の顔を、あなた誰ですか?というまなざしで見て、僕は寂しいんですという顔で気に入りの毛布を前足で何度も何度も踏みしめていた。家に泊まって三日目に、時間が空いて何をするでもなく椅子に座っていると、ルーが足もとにやってきたので抱き上げると、じっと抱かれていた。久しく計ったことがないけれどきっと八キロはある黒猫を抱きしめていると、猫を抱いているのか、猫に抱かれているのかわからなくなってくる。ルーは指と爪を肩にぎゅっと押し付けて放されまいとしながら、ほっとした顔をして目を閉じていた。肩に押し付けられた小さい足の感触に、私はこんなに寂しい気持ちになったことがあるだろうかと思った。嬉しくても寂しくても悲しくても、どこか冷たく見放している気持ちがこみ上げて来て、その度に戸惑う。ルーは小さい鼻息を立てながら眠っていた。
しばらくたって腕がしびれた頃、一度床に降ろそうと動くと、ルーはぱっと目を見開いて、どうするんですか?という目をして腕をぎゅうと咬んだ後、あなた誰だったんですか?という冷たい顔になって歩いて行ってしまった。
帰る時、日向で寝ているルーに帰るねと声を掛けると、ニャと啼いて尻尾をゆらんと動かした。