
Newspaper / 五感のチカラ 京滋の表現者達40(京都新聞朝刊)

2006.08.01.

press

五感のチカラ 京滋の表現者達40
(京都新聞朝刊)
Newspaper
Colonbooksでの個展会場にて、取材いただきました。
以下一部抜粋
「字の形に、息を吹き込むように書きます。その息づかいが感じとれる所まで近寄ってください」。名古屋市にある日本陶磁器センターのホール。書家・華雪さんの声に、会場の空気が張りつめた。
約五十人の観衆が取り囲む中、長い髪を束ねた華雪さんは座り込み、床に置いた九十センチ四方の紙をじっと見つめる。おもむろに太筆に墨をつけ、左手でゆっ
くりと毛先をしぼった。筆は小学生の時、自らの毛髪で作ったもの。自分の体の一部だった、その毛先をいたわるように触れ、心を研ぎ澄ませた。
やりをつかむように右手で筆を握り直し、紙と対峙する。満身の力をこめた筆が、一気に動き始めた。書かれた字は「前」。一部分がにじみ、かすれた、太く躍動的な書が生まれた。が、華雪さんはそれをしばらく見ると、紙を丸め、投げ捨てた。観衆からため息がもれた。
華雪さんの「書字パフォーマンス」は、こんな「字を書く」行為を繰り返す。その間、約三十分は口を開かない。字と格闘する様子だけを見てもらう。結局、
「前」を十四回書き、納得した作品は五枚。ようやくふだんの柔らかな表情に戻り、「前」を書いた理由、書に対する思いを語り始めた。
「一つ一つの字に、はっきりとしたストーリーがある」。「前」は旅にちなんだ漢字だ。足形を表し、歩く意を持つ「前」、水盤を示す「月」、刀を表す「リ」
が組み合わされ、「旅の後、自分の家に戻り、水盤で足を洗い、刀で伸びたつめを切る。そしてまた、旅に出る意味」。成り立ちを解き明かし、言葉を続けた。
「私は京都で生まれ育ち、今、東京に住んでいる。その中間点が名古屋で、昨年も同じ時期にここで字を書いた。字を通して旅をしているよう。書くことで新た
な自分や人に出会う」。